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「やつぱり徳さんが多いね」
「いや、そこまで確かなことにはしませんでしたが」
「何だらう、山師を煽おだてて又一儲けしようてんだらう」
房一のまはりには三人の男が立ちかこんで、黙つて治療の様子を見まもつていた。背中をむき出しにして横向きに寝た男は、傷を洗はれるときに呻うめいた。血の気の引いたその顔にはどす黒い蒼白さが現れた。
別に会ふ気がなかつたから、と云ふ代りに、
と、房一は自然と紅黒い顔をひきしめた。相沢は随分永い間、それこそ房一がうんざりするほど永い間こつちをのぞきこんでいたが、
「この人はちっと眠むがってるでな……」
「いや、そのうち又ゆつくり話さう」
今度は正文の方で答へなかつた。そして急に苦がい顔になつて、ぢろりと薬戸棚を見まはしただけで母屋おもやの方へ帰つて行つた。
「さうか。うちの方では山車だしを引いて出るさうだ。それから、みんな紋付に羽織袴といふことだの」
それは背広姿に、遠目にもはつきりと判る緑色のソフトをかぶつた男であつた。
「別に惜しいほどのことではありませんよ」つづけて、ふいに調子を変へると、
「徳さん。追鮎は君のといつしよに活かしといてもらはうか――どつこいしよ」